『FITNESS BUSINESS』 Leadership トップインタビュー

『FITNESS BUSINESS』 Leadership トップインタビュー

RYOZAN PARK代表 竹沢徳剛が フィットネス業界の経営情報誌「FitnessBusiness」のインタビューを受けました。

個性やビジョンが育つ場所を作り出し、私自身が

共にそれらを楽しんでいれば周りは広がっていく

現在「東京にある多様性を追求する村」を目指し、RyozanParkというシェアハウスとコワーキングスペース、プリスクールなどを大塚と巣鴨の複数拠点で運営している。もちろん、充実したジムスペースを完備し「店子たちに筋トレをさせたがるお節介な大家」の一面も持つ。RyozanParkは中国の明の時代に書かれた小説「水滸伝」の舞台である梁山泊(りょうざんぱく)からきている。その小説内で「志をもつ熱血漢たちが集ったような場所」の形成を目指して実験的なコミュニティを立ち上げている。シェアハウス数45室。シェアオフィス会員400名。約80社のインキュベーション支援を行う。そのリーダーシップに迫る。

アメリカに留学をされたあとに現地で就職されたと思いますが、その後日本に帰ってきた経緯はなんですか。

震災で疲弊した日本が元気になるためには、「多様性を受け入れる社会が日本には必要だと」と強く感じました。国籍や人種に関係なく、夢に向かって努力する人を受け入れ、ひとつの家族のように暮らす。そんな新しいコミュニティがこれからの日本には必要だと考えました。まずは自分の地元の巣鴨に戻り、「おばあちゃんの原宿」と言われている街に、多国籍で、志を持った若者たちが衣食住ならぬ寝食を共にするコミュニティを作りはじめました。シェアだからと言って内装はおろそかせず、ドイツやイギリスの生活用品の会社からも協賛を受けこだわりを持ってデザインしています。

昨今のトランプ政権とコロナ禍によって、アメリカのみならず、世界中で潜在的な人種差別意識が表面化してしまった事実はとても残念です。しかし、移民国家としてのアメリカの懐の深さは本質の部分では変わらないと思っています。

私の妻はスコットランド人。妹はトルコ人と結婚しました。異なる人種と宗教で育った人間たちが一つの家族になっています。異なる価値観を認め、他者から学び続けるとの重要さを身を持って体験しています。

実験的コミュニティを自分の生まれ育った地域で、家族や仲間を巻き込み、運営することを使命と感じています。

とくに課題意識を感じる社会問題はなんですか。

広がる貧富の格差、少子高齢化、地球温暖化などきりがありません。フィトネスビジネスさんにインタビューされたからでは決してありませんが、「筋肉トレーニングがもっと日本社会に浸透していくことで、社会問題のいくつはかなり改善されるのではないか」と信じています。筋トレ効果によって脳内からアドレナリンが分泌されれば、より人間は積極的になれますし、テストステロンは少子化を改善していくかもしれません。筋トレによって足腰が丈夫になり、自立した高齢者が増えれば、社会保障費を若者や子供達の教育に回せる。他にもエンドロフィンとオキシトシンの効果は、読者の方には釈迦に説法ですよね。地球温暖化を筋トレはどう改善できるか。それだけは考えがまだ及びません。是非みなさんから教えて頂きたいです。

コミュニティに求めることはなんですか。

世界的ベストセラーになったユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』に「近代国家の台頭は、個人に権利を与えた一方で、コミュニティと家族の衰退を招いた」とあります。今日、行き過ぎた資本主義が過渡期を迎えていることを世界は気づきはじめています。しかし現代に生きる私たちが求めるコミュニティは、かつてのような偏狭な村落共同体でも、家父長制的な家族でもありません。

はっきりと言うことは難しいのですが、お互い自立しながらも助けあい、逆に嫉妬で足を引っ張ることもなく、お互いの個性や、幸せを祝福できる人々が集まる文化でしょうか。フェアな取引が基本にはありますが、時には「君のために一肌脱いでやるよ」というウエットな助けあいが生じるコミュニティの優しさも求めています。

コミュニティを作るうえで大切にされていることはなんですか。

ロンドンビジネススクール教授リンダ・グラットンの『ワーク・シフト』に人生100年時代に必要なやすらぎを与えるコミュニティの3要件があるのでご紹介します。①「知的興奮を味わえ、創造性が刺激されること」②「自分らしく生き、自分を自由に表現し、自分の個性を育めること」③「ほかの人と知り合い、友達になりやすいこと」そして重要なのは、受け身ではなく「自ら選択してそのコミュニティに入り、意識的に人間関係を築いていく」主体性とあります。

多様なバックグランドを持ったメンバーたちを繋げるには理屈っぽい話をしているだけでは無理です。感性に訴えかけ、身体性を持った”何か”を共有しなければ仲良くなれないと感じています。我々の共用部に、汗をかくジムがあったり、美しいアートを飾るギャラリー、心地よい音楽を奏でられる暖炉付のイベントスペース、美味しい食を共に囲めるキッチンがあるのはそのような理由からです。また芸術家、シェフ、音楽家、冒険家、小説家、ヨガイストラクターなどクリエイティブなメンバーを大切にしています。これも、貨幣だけでは交換することできない”夢”や”創造性”を彼らは豊かに持っていて、彼らの存在が周囲に勇気を与えてくれるからです。

竹沢さんにとってリーダーシップとはなんですか。

実は自分にリーダーシップがあるとは思っていないのです。ただ常々周囲に「行政に頼るだけではなく、欲しい生活は自分たちの手で作っていこう」と話し、夢を語っています。シェアハウスの事業を始めて、数年のうちに、住人同士で交際をはじめ、そして結婚する者たちが複数組誕生しました。同じ時期に、豊島区が「消滅可能性都市」と言われ、全国的に保育園に預けることが難しい問題が起きました。そこで住人や仲間たちを集め、「どんな環境で子育てと仕事をしたいか?」というワークショップを開催しました。そこで出ててきた子育てと仕事の両立を図る「託児所付きのシェアオフィス」が実現し、30組以上の親子が日常的に通うプリスクール&コワーキングとして運営しています。

先進的な事例として東京都から、「女性向けインキュベーション施設」として認定を受けました。(別に子育ては女性だけの責務ではないので、父親たちも多く使っています。)

卒業した親たちが、自分の出身地に帰り、生活と仕事を両立できるシェアオフィスやコーワキング付きのカフェを始めたケースもあります。夢を語ることで、それを面白いと感じてくれ、参画してくれる方達によって自分は支えられていると思います。

今後のビジョンについて教えてください。

順風満帆に見えるかもしれませんが、実はプリスクールは赤字体質で収益をあげるのが非常に難しいのです。教育事業こそ長期的なビジョンを持つことが重要だと言い聞かせています。「ゆりかごから墓場まで」はイギリスの社会福祉のスローガンですが、子育て、働く、住む、遊ぶ、学ぶといった包括的な生態系を近隣で形成していくことが夢です。高齢者の筋力トレーニングや健康管理なども人生100年時代、これからますます重要になりますよね。そして大切なのは老若男女、世代間の交流のみならず、人種、国籍、LGBTQ、障がい者も互いが一人の人間として交流し、学びあう環境をいかに自然体で作っていけるかだと思います。そのためには、僕自身がまずは楽しみながら、仲間を集めていきたいと思っています。

最後に夢を一つだけ語ると、街中の広場に懸垂用の鉄棒を設置したり、ブルーベリーなどの食用の果樹を街路樹として沢山植えることです。日本の公共空間って、あまりにもつまらないと思うんです。市民が「コモンズ」空間で、垣根を超えて筋トレをする。そして道端のフルーツを潰したプロテインシェイクで乾杯しながら、地域コミュニティのことを語るって美しくないですか?

 

ありがとうございます。『FITNESS BUSINESS』 2021年5・6月号 Leadership トップインタビューから掲載

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