女性の居場所

近、愛知県の私立保育園の保育士が、先輩に先駆けて妊娠したことに対し強制的に謝罪させられる、という事件がありました。本当に気持ちが落ち込むニュースですが、驚きはしませんでした。日本の職場での女性差別についての話は、よく耳にするからです。それが、例えば、女性支援を目的とした業界の中の話であってもですから、特に女性支援関連ビジネスにおいては、関連業種に根ざした女性の政策立案者が改めて必要だと考えさせられました。

 

“私達のコミュニティーのユニークな点は、その中心に一つの家族がいることなのです。”

 

Ryozan Parkは、2012年に巣鴨のシェアハウスとしてスタートを切り、独特なインテリアと託児所をも備えたシェアオフィスを展開するなどし、これまで多数のメディアや企業、人々の注目を浴びてきました。彼らはみな、どうしたら私たちのようなコミュニティを構築することが出来るのかを知りたがったのです。でも、私たちのやり方を他の人が同じように行うことは、とても難しいだろうと思っていました。なぜなら、私達のコミュニティーのユニークな点は、その中心に一つの家族がいることなのです。でも、確かに「家族」は重要な要素ではありますが、最近知った興味深い用語があります。ラブ・エシック(愛の倫理)というビジネス用語で、私はそれこそが、人々がRyozan Parkに見出す何かだと思ったのです。この考え方について詳しくここで述べられています。とりあえずは軽く「ラブ・エシック」とは何かをまとめると、ラブ・エシックやラブ・ベースド・エコノミー(愛が基盤の経済)とは、人や環境を優先し、金銭的な収益よりも、そこに関わる全ての人々の利益を尊重するということです。

 Ryozan Parkは活気ある、多様性を備えたコミュニティです。そこでの価値観は、単に個々の断片を集めただけのものより大きな意味を持ちます。2015年にオープンした大塚のシェアオフィスの目的は、コミュニティの拡大とそこで働く両親、特に母親たちの支援をすると言うものでした。フロア丸ごとをファミリー用として、時間制のデイケアもオープンしました。そこは両親や子供、スタッフが共存できる、小さなオアシスでした。

 

“理想を現実のものとするためのお金と時間を持っている企業はほとんどありません。私たちとて同じです。”

 

どれもこれも、すごく素敵に聞こえるでしょう?でも、理想を現実のものとするためのお金と時間を持っている企業はほとんどありません。私たちとて同じです。社会のためになるようなビジネスであったとしても、経済的に成り立たないと意味がありません。2015に立ち上げた時間制のデイケア、「こそだてビレッジ」を閉鎖するという決断は、本当に辛いことでした。でも三年かけて育ててきた私たちの大切な育児のための村は、映画でいうところの(商業的には成功しない)隠れた名作のようなものであることを、受け入れなければなりませんでした。時間制の「見守りシステム」は、ニッチなマーケットにはぴったりでした。つまり、フリーランスで仕事をしている方で、子供が文字通りすぐ横で遊んでいる状況を望む人が対象でした。でも、マーケットとしてはニッチ過ぎたのです。こそだてビレッジは、商業的には失敗しました。

三年間の努力が無に帰すのを目にし、そこに根ざしたコミュニティに関してはいうまでもなく、のるかそるかの決定を今後のために素早く行う必要がありました。もちろん一番簡単な方法は、健闘むなしくも失敗したと、そのフロアを何か別のシェアワークスペースに変えてしまうことです。でも、新しい事業を立ち上げるといことは何かを試して、失敗して、また新たに試みを行うことなのです。私達は、すでに、そのコミュニティのメンバーに向けて高品質のサービスを提供してきました。ですから、後退するのではなく、経済的に成り立つために利益を生み出すビジネスに変化させ、前進することが求められたのです。

 

“産後、彼女が復職する上で、私たちは、彼女に息子を仕事に連れてきても大丈夫であること、フレキシブルな就業時間と私達の託児施設の利用を提案しました。”

 

 スクールの校長は、経験豊富な保育園の先生であり、カリキュラム開発や教員指導も行うマーガレット。彼女との縁は、2015年に遡ります。私たちのことをネットで見つけた彼女が、私に連絡をくれたのです。私たちが目指すコミュニティーの在り方にとても共感し、ぜひ一緒に仕事をしてみたいと伝えてくれました。そこから三年間かけて繋がりを深くしました。また、日本の保育士の資格を持ち、RZPシェアハウスの元住人である直美は、一番上の子供が生まれる時に小学校教師の職を離れ、その後、「こそだてビレッジ」に働きに来てくれることになりました。産後、彼女が復職する上で、私たちは、彼女に息子を仕事に連れてきても大丈夫であること、フレキシブルな就業時間と私達の託児施設の利用を提案しました。こうして、クラスでの指導はマーガレット、事務方は直美という二大柱を確保することができ、初めて、先に光が見えてきました。英語幼児教室の開校に必要な財務や対外的な調整を行うなどのタスクをこなすうちに、ようやく更なる出発点が見え始めたのです。

 私とマーガレットと直美に加えてマーケティングとインキュベーション・マネージャーであるカヴも、ウェブサイトと広告作成に力を注いでくれました。その間もノリとコミュニティ・マネージャーのシンゴが、政府の資金支援を申請するのに必要な書類を急いでまとめていました。これまでの「こそだてビレッジ」のクオリティを保ちながら、それぞれの理想に向かってやる気満々、力を合わせて新しいビジネスの計画を練り上げていきました。また、ちょうど私と直美は、同時期に二番目の子供を宿していました。その子たちの兄弟・姉妹のように、生まれてくる子供達もみんな同じ学校に通う事になるのです。そのことも、私たちに前進するパワーを与えてくれました。

 資金支援の申請が通ったとの知らせを受けたのは、開校のほんの数か月前の事でした。おかげで、その場所をより良いものにし、見つけられる限り最高のスタッフを雇う事が出来ました。 幸せな事に類は友を呼ぶというわけで、自分の仕事に心からの情熱を注ぐ、経験豊富なスタッフを見つける事が出来ました。

 

“子供を保育園に入れた親は自動的にシェアオフィスの一員となり、コミュニティやイベント、ビジネス・インキュベーションの施設を利用することができます。”

 

そして今、ついに私たちはRyozan Park 大塚に、100%英語での保育園をオープンしました。Ryozan Park 大塚にはスタートアップのための12の個室があり、100人のメンバーを抱えるシェアオフィス、コワーキング・スペースでもあります。子供を保育園に入れた親は自動的にシェアオフィスの一員となり、コミュニティやイベント、ビジネス・インキュベーションの施設を利用することができます。また、ランチタイムに子供と一緒にダイニングキッチンを使用したり、他の親たちとコーヒーを楽しんだり、帰宅の前に子供にご飯を食べさせることもできます。毎月のイベントでケータリングの昼食会を開き、スキルを共有するために話し合います。教師や親たちの間に垣根なく、自由に対話できるようにと、週一回のコーヒータイムも設けています。もちろん、参加は自由です。私たちの目標は、親という骨の折れる仕事を、少しでも楽にすることなのですから。

 このプロジェクトでは女性が舵取りを行っており、私はそれを心から誇りに思っています。パネル全員が男性という、神奈川県の女性支援キャンペーンを例に挙げるまでもなく、女性の地位向上にまつわるプロジェクトの多くが男性委員のみで取り仕切られています。その設立から経緯まで、「Ryozan Park Preschool」は女性たちの経験と文化が織り込まれた作品なのです。核となるスタッフは、それぞれハワイ、タンザニア、フィリピン、日本出身のベテラン教育経験者たち。スタッフ全員の経験を集めると60年以上になり、不思議なことに全員が、4人、5人、6人の姉妹を持つ、大家族出身という共通点もあります。

 

“スタッフに競争力のある給料を支払うことで、より安全で、高品質の教育を子供達に提供できます。もちろん、保育料金を出来るだけ下げて、一般の家庭の皆さんがこの機会に接することができるよう心がけています。”

 

さあ、これからです。私たちはまず、これまでのやり方を修正し、理想像の調整を行いました。それでもまだ、疑問は残ります。このビジネスは持続可能なのでしょうか?開校から8ヶ月近く経ちましたが、収益はトントンといったところ。でも、大丈夫です。政府からの支援のおかげで、まずはサービスのクオリティと社会的価値を上げることに集中することができました。例えば、まずはスタッフの目が十分に行き届くように、少人数からスタートするのができたのです。そこから、年間を通じてゆっくり生徒を増やしていけばいいのです。夕方と週末を有効利用すれば、2年後に資金支援が終わっても自立できるように工夫もできます。スタッフに競争力のある給料を支払うことで、より安全で、高品質の教育を子供達に提供できます。もちろん、保育料金を出来るだけ下げて、一般の家庭の皆さんがこの機会に接することができるよう心がけています。言うまでもなくそれは非常に難しく、それでいて、とても価値があることなのです。

 だからこそ、プロジェクトの資金計画はとても重要で、特に利益よりも新たな価値観を生み出そうと心に決めた場合は、死活問題となるのです。社会的貢献をうたう公共サービスの多くは、それらの提供するサービスの質を考慮することなく運営されているのです。

そして持続可能なコミュニティを運営する上で何より大切なことは、適切なスタッフを揃えることだけではありません。入校志望の園児たちが集う説明会では、カリキュラムと学費の説明だけではなく、私たちのコミュニティー理念を両親たちへ伝えることも重要なのです。このコミュニティーの価値観を共有し、お互いに関心を持ちながら、協力体制を築けるような人、自分のスキルと経験を進んで提供することを望み、コミュニティを豊かかにする手助けをしてくれる人を歓迎したいと思っています。

 

“他の生徒の母親は、教員が、彼女の家族に不幸があって急な休みを取る時に、無償で教員の代わりとして手助けすると申し出てくれたのです。”

 

 こうした努力は、すでに報われようとしています。最近、生徒の母親の一人がスタッフとして加わりました。他の生徒の母親は、子供達の為にアレルギーフリーのおやつを家で作ってきてくれるようになりました。また別の母親は、プリスクール教員の家族に不幸があって急な休みを取る時に、無償で手助けすると申し出てくれたのです。また、多くの他の親たちはランチを一緒にしたり、子供を迎えた後もコーヒーを手に寄り添います。ほんの数週間前は見知らぬ者同士だった人々が共に過ごす姿を目にすることは、事業オーナーとして、そしてプリスクールに子供を預ける親の一人として、本当に嬉しいことです。

 それでも、何か価値あることを行うためには、犠牲が必要な時もあります。はじめのプランでは、赤ちゃんと家に閉じ込められるしかない新米母親たちを支援することを考えていましたが、乳幼児は一対一のケアを必要とします。しかし、私達にはそのための保育士を揃える十分な資金がないとわかり、1歳未満の生徒の受け入れは諦めざるを得ませんでした。スタートアップの段階がひと段落したら、また彼女達を手助けできる試みをしたいと考えています。その代わりと言ってはなんですが、(合計6人の赤ちゃんがいる)4人のスタッフが無理なく復職出来るように、お乳をあげたり抱っこしたりする機会がたくさん作り、働きながらでも子供と離れ離れになることのない場所を用意していきます。

 

“結局のところ女性の居場所とは、そこがどこであれ、自分自身が輝ける場所のことなのです。”

 

 もちろん、すべての母親がすぐに復職したいかといえば、そうではありません。でも中には、すぐに復職して子供を長時間のデイケアに入れたいと望む人もいます。私たちが提案するのは、第三のオプションです。結局のところ女性の居場所とは、そこがどこであれ、自分自身が輝ける場所のことなのです。自分が有能でいられて、自己実現が可能な、周囲の人々のために自分の能力を役立てることが出来る場所です。そして、自分の能力を最大限に発揮出来るようサポートされる場所でもあります。そこでは女性自身こそが、理想を現実とするには何が必要なのかを誰よりも明確に分かっているのです。



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